私は顔を上げずに、失望感と怒りを内部に抑え込む。
お友達と言って、私を騙したっ……!
許さないっ……! 絶対に許さないっ……!
顔を上げれば、端正な顔立ちの――。
やあああああっ!? 今の私は、目がハート状態。
それくらい。とびっきりの美を持つ男――イケメンお兄様!
メガネがよく似合って、キュート……じゃなくて、美少年!
「はっ……はじめましてええええええっ!」
興奮のあまり、声が上がってしまう。
もう、メロメロ。やばいよ、やばいっ!
ヘロヘロ状態からの、身動きが取れない状態の私は彼の虜。
ああっ……! 心臓が破裂しそうで、死にそうなくらいドキドキしている。
お兄様の前では、私は何もできない女の子になってしまうっ!
あの朝霧彩のお兄様なんて、はんそくううううううううっ!
「ど、どうしたんだいっ!?」
心配そうに近づくお兄様に、私は失神するくらいやばかった。
……こいつ。僕の美貌に、鼻血を出していやがる。
濡れた玄関前で、それも地べたで、顔を真っ赤になって驚く。
この罪深き、メスガキ。元アイドル、にじみんを。
「ほら。僕に掴まって?」 優しく声をかけ、両手を差し出せば。
ぶるぶると振るわせて、僕にしがみつくような掴み方をしてくる。
メスガキのくせにして、僕に恐れおののいている。まあ、当然だろう。
僕はど底辺の屑どもとは、違うのだからな。
神に選ばれし――(省略)。
ふっ。とりあえず、家に招き入れてやろう。
彩(サンドバック)の“お友達”だからな。
異様な気配を感じ取れれば、こちらを凝視する醜い顔の男がいる。
あのコンビニレジの男、キモオタか。ガキのケツ回す変態か?
鼻水を垂らし、悶絶するあの男は、一番嫌いなきもい屑だ。
わざとらしく、鼻で笑えば、絶望に染まる酷い面。
くずくずくーーずっ! そこで、見ているがいいさっ!
はーーはっはっはっはっはっ! 何度も言うが、僕は神に選ばれし男。
その辺の屑じゃねええええんだよっ! ばーーかっ!
にじみんを招き入れ、家で見つめあうとことに専念。
このメスガキを利用するのは、この僕だ。ふふふふふっ。
お兄様の紅茶を入れる所作は、優雅で丁寧で品のあるもの。
あやっぴーのお兄様は、こういうものに慣れているんだわ。一目でわかるもの。
「こ、ここでお食事をっ!? いつもされているのですかっ!?」
私の質問に、お兄様は控えめな反応。
「えっと……彩のお友達。穴沢さん……だっけ?」
私に対して、そんな他人行儀はだめ。
「にじみんって、呼んでください。お兄様っ!」
腕をくねらせて、のりのりなかわゆいポーズを披露する。
「あははっ。今、病院から電話があって、彩は無事だって」
安堵するお兄様に、私は笑って大喜び。
「あーー! よかったですうっ!」
……そう。無事だったのね。
でも。私を裏切った償いを晴らしてもらうわ。
あの“パンツステッキ”で、ちゃんとしてもらうんだから。
お互いに笑い合う。お兄様の場合は、妹が大事だからかもしれないけど。
お兄様の笑顔を見ると、罪悪が……ううっ。
ああっ。本当は、あやっぴーを殺したいっ!
ぶち殺したいっ! けど。けどけどけどけどけどっ!
そんなことをすれば、お兄様が悲しむ……ああっ!
なんで、この世の中。恋路を邪魔をするのっ!
私を迷わす運命! つらつらたんっ!
「ああ。僕もほっとしたよーー」
――ああ。良かった。僕の彩(サンドバック)が生きてくれて。
大切に扱わないと……僕のためにね。
「ところで、君みたいなかわいい女の子が、どうして彩と知り合いなのかい?」
「か……かわいいっ!?」
恥ずかしそうになりつつも、僕の言葉に食いつくメスガキ。
はははっ。嘘だよ。あの根暗糞ゴミの彩が、国民的なアイドルとつるむわけがない。
すぐに打ち解けるとはありえない。これでも、兄だからね。
――彩に友達ができたという、最初のメスブタ。
奴村露乃。すかしたメスブタ。にじみんのように、僕を見向きもしない。
かわいくないガキ。
彩のパソコンで見つけた検索。魔法少女サイト。
そして、目の前にいるにじみん。利用するものは、とことん利用してやろう。
ふふふふふっ。僕は神の――(省略)。
魔法少女サイトにて、顔芸二人。その続き。
6話を視聴して思った。顔芸が突き出ている。
もう、お笑いかなというくらいの二人です。
毎回、次回予告のたびに、屑兄貴のエスカレートはもう。
こいつ、ラスボスでいいんじゃね? と思いました。普通に。