十人十色詩

作者の日常を綴ったもの。小説やゲームなどの話題あり。
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ロマサガ2~逆行皇帝ソレイユ~ 121 (完)

※最終皇帝編、終了。彼らは、物語の中に。


 「太陽たちは、伝説となりて」

 剣技を行い、華麗に舞う――旅芸人の娘。
 凛とした表情で、彼方を見据え、堂々と舞踏をする。
 そして、両足を閉じ、お辞儀を行う。

 僕は彼女に合わせ、リュートを奏でる。
 弦を引きながら、物語の最後を締めくくる。

「七英雄を撃破した、最終皇帝ジェラール。仲間とともに、アバロンへ帰還した。
 人々に祝福され、歓迎を受けていた中、彼は退位することを決めていた。
 彼は人々に退位宣言し、その一年後、皇帝という位が消えた。
 アバロン帝国は、共和国へと変わった――」

 音楽を止めると、拍手喝さいが巻き起こった。
 観客が解散し、それぞれ離れていく中で、幼き子どもが駆け出してくる。

 穢れなき、純粋な瞳。真っ直ぐ、僕を見つめる。
「詩人さん。ジェラール皇帝は、どうなったの?」

 素直に問いかけてくる子どもに、僕の笑みがこぼれる。

「彼は大好きだったリュートを片手に、世界中を旅しているよ。
 愛のある音楽を奏でるために、彼は頑張っているのさ」

「詩人さんと同じなんだねっ!」 子どもは目を輝かせ、僕に食いついた。
 僕は目線を落とし、子どもの頭を優しく撫でる。

「ああ、そうだよ。僕はジェラール皇帝に憧れて、語り手になったんだ。
 ――もう、おしまいだから、帰りなさい。お母さんが心配しているよ」

「うんっ! ありがとう、詩人さんっ!」
 子どもは身を翻し、母親の元へ飛び出していった。
 子どもを引き連れ、母親は礼をして、その場を立ち去っていく。
 見送ったあと、マスターから、声がかかる。

「陛下。本当のことを言わないのですね。
 嘘を交えた、信憑性のある話を作って」

 批判的な発言であるが、からかいが含まれている。
 口元を緩めているのが、その証拠だ。
 僕の頬が、徐々に火照り始めた。恥ずかしくなりつつも、反論をする。

「……マスター。陛下と呼ぶのは、やめてくれ。
 僕はもう、皇帝ではない。帝国の人々に忘れ去られた、歌だけの存在さ……」

 退位をせず、皇帝として、世の中を見送ったとしたら。
 七英雄と同じように、恐れられ、悲劇が起こされる。

 権力ありきものが、いつまで、居残っていたら。
 人々は、自分の足で歩くことさえできないし、他人任せになる。

 僕がいなくとも、人々が幸せに暮らせるのなら。
 僕がいなくとも、人々が協力し合って、未来を掴み取れるのなら。
 僕はそれだけで、安心するし、身を引くことだってできる。
 僕はそのために、人々を見守る影になろう――。

「それだったら、あたしも女帝じゃないわよ。
 あなたと一緒に、退位したから」

 アルシオーネは、濡れタオルで汗を拭き、カウンター前に座った。
 マスターから差し出される、翡翠のカクテルを一口含む。
 わずかであるが、頬が朱に染まった。

 アルシオーネの隣に、ジプシーの女が一人。
 僕はその隣へ座り、目の前に出されたカルーアミルクを飲み干す。
 辛く痺れる舌。喉奥が熱く、体中も熱くなる。

「ジェラール、アルシオーネ。あなた方は、誠意を魅せました。
 運命から逃げず、七英雄に挑みました」

 オアイーブは冷酒を飲み、僕の中にいる“彼ら”に、メッセージを贈る。

「レオン様。彼を通ずる、歴代の皇帝陛下様。
 古代人代表として、私からお礼を言わせてください。
 ――“ありがとうございます”」

“いや、こちらこそだ。オアイーブ”
“成り行きでしかなかった。あの頃のことは”
“お前がいなければ、七英雄に勝つことができなかった”
“そして、ソレイユ……。 未来の皇帝にも、会えたしな”

 酔いが回ったところで、僕はカウンターに身を寄せ、まどろみになっていく。

 伝承法の始まりの元になった、僕を導く皇帝たち。
 どんなに辛く、悲劇があっても、あきらめてはいなかった。

 ありがとう……みんな……。
 そんな彼らを、僕は想い浮かべ――両目を閉じた。
【 2017/08/13 (Sun) 】 ロマサガ2小説 | TB(-) | CM(0)
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プロフィール

両性こたつむり

Author:両性こたつむり
「君が望む世界詩」の管理人です。
ロマサガ2、ダイ大などの二次小説を書いていますが、FTやSFなどのオリジナル小説も書いております。

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